
7つの学位プログラム機械科学系プログラムMechanical Science Program
材料科学分野、エネルギーシステム分野、知能機械学分野、生産工学分野の構成の下に、最新の高度テクノロジー社会の根幹を成す科学技術分野である機械工学の専門性の深化と、広い視野に立って他分野との融合により、課題の探求・解決能力を有する高度な「ものづくり」を担う技術者や研究者の育成を通して、安全・安心・快適かつ次世代の持続可能な社会 の形成に貢献することを目的とする。
機械工学を基盤としつつ、より高い専門性と複合的な視点に基づいた課題解決が求められる高機能機械・構造用材料の開発技術、熱や流体エネルギーの有効利用技術、制御システム開発技術、生体医工学関連技術、高度設計・生産・加工技術開発、先端計測技術開発などに貢献できる創造性を持ち、高い研究能力を有する人材および高度な知識と技術開発能力を有する人材を養成する。
- このプログラムの対象分野
-
- 材料科学分野
- エネルギーシステム分野
- 知能機械学分野
- 生産工学分野

環境に優しいエネルギー
~セラミックス材料を用いた電気化学デバイス~
高効率エネルギー変換を目指した電気化学デバイス研究
地球環境に調和した技術社会の達成への寄与を目標に、高効率エネルギー変換技術に関する電気化学デバイス(蓄電池・燃料電池・固体照明)に関する研究を行っています。主に、無機固体材料(セラミックス材料)におけるイオン・電子の移動現象に関する研究(固体イオニクス)、また放射光などの量子ビームを用いた分光学的手法による電子および結晶構造の研究に取り組んでいます。
持続可能な社会に向けたエネルギー変換材料の開発
環境に優しいエネルギーとして、水素エネルギーが注目されています。水素エネルギーを高エネルギー効率で電気エネルギーに変換する全固体燃料電池、そして水蒸気から水素を製造する固体酸化物形電解質セルに関する研究に取り組んでいます。また、蓄電池の中でも最も高いエネルギー密度を示すリチウムイオン二次電池の高容量正極材料の研究、そして我々の生活必需品である固体照明用の蛍光体材料にも取り組んでいます。
イオン・電子の移動現象解明と高性能材料設計
固体(セラミックス材料)内にイオンや電子が伝導することで、電池材料や蛍光体材料として機能します。周囲の雰囲気と平衡状態にある固体材料は、「定比例の法則」が厳密には成り立たず、構成比にある程度巾がある不定比組成を取っています。無機固体材料に積極的に欠陥を導入することで、大きな不定比組成を有する材料を作製し、イオン・電子導電性、機械特性、触媒特性などの特性を発現・制御します。
燃料電池は、次世代のエネルギーである水素を用いて高効率な発電を実現できます。発電時に排気されるのは“水”のみであり、環境負荷の少ない発電システムです。固体酸化物形燃料電池(Solid oxide fuel cell: SOFC)や固体酸化物形電解質セル(Solid oxide electroslysis cell: SOEC)は高温で作動することから高い発電効率を示します。これらは、すべてセラミックス材料で構成されており、固体中のイオン(酸化物イオン、プロトン)及び電子の移動現象は固体内の欠陥構造に大きく依存します。リチウムイオン電池(Lithium ion battery、 LIB)は二次電池の中でも高いエネルギー密度を示します。LIBの更なる性能向上を目指して、高容量正極材料であるリチウム過剰系層状酸化物の研究を行っています。また、全固体LIBの機械強度に関する研究にも取り組んでいます。
白熱ランプや蛍光灯の照明と比べて、高いエネルギー変換効率を示す固体照明が急激に普及してきました。固体照明では、光を出す配光部に蛍光体であるセラミックス材料が用いられています。固体照明の演色性・照度(効率) ・耐久性・散乱性・意匠性の向上、 また新規酸化物蛍光体材料の開発を行っています。
エネルギー問題解決への貢献と未来への展望
我々は、世界のエネルギー転換期を体現する世代になります。水素を安全に、有効的に利用する方法を学び、再生可能エネルギーの貯蔵に必須である蓄電池に関する知識を得ることができます。電気自動車用途の高エネルギー密度を示すリチウムイオン二次電池に関する研究開発も世界的に進められています。グリーントランスフォーメーションの一端を担う研究者・技術者としてエネルギーのイノベーションに取り組みましょう。
新規材料創出によるイノベーションの創出
カーボンフリーな社会の実現に向けては、既存の技術には寄らないブレイクスルーとなる新規技術が必要です。我々は、まだ誰も見出していない、新規材料の創発を目指して、日々研究に取り組んでいます。研究は楽しい、と思える仲間が増えますように。

大石 昌嗣教授
純粋に、学術学理の理解および解明に向けて、集中的に取り組むことができる博士課程での時間は、何をもっても代え難く、とても貴重です。今日のように複雑な世の中で、博士号は自分の支えになり、また得られた知見は自らの力で歩む力の源となります。まだ見ぬ世界へ、step forward.